はじめに

財団法人 新潟県下水道公社は、新潟県の流域下水道施設の維持管理を目的に昭和55年度に設立されました。
現在、公社は、下越地区に設置された新潟、新津、新井郷川及び西川、中越地区に設置された長岡、六日町及び堀之内、並びに佐渡に設置された国府川の5流域下水道8処理区と長岡処理場に併置された中越流泥処理センターの維持管理を新潟県から受託しています。
出資法人を巡る環境は、地方財政の逼迫に伴う管理運営コストの縮減を求められ、また、全国の下水道公社の中には廃止や統廃合に至る公社も散見されるとともに、指定管理者制度や包括民間委託が導入されるなど社会環境の変化も年々厳しさを増しています。
新潟県においても「公共施設改革委員会」や「新潟県出資法人経営評価委員会」等において、県出資法人の在り方が検討されるなど、当公社を巡る将来展望は不透明な状況にあります。
こうした中、公社の永続的な存続のためには、広く県民、市町村、及び県はもちろんのこと、各種検討委員会の委員の皆さんからも、「当公社の存続は、県及び県民にとって必要かつ有為である」と認識していただくとともに、職員が一丸となって”公社の在り方”に理解を得る努力をする必要があると考えます。
そのために、「今後、我々は何を為すべきなのか」との観点から攻めの方策を検討するため、平成22年度当初に「公社の将来を考えるワーキンググループ」を立ち上げ、一年間にわたり、延べ12回に及んで真剣に検討した結果をここに報告するものです。
 
平成23年3月
 
公社の将来を考えるワーキンググループ
座長:佐藤良太(新潟本社 業務課長代理)
   中嶋 淳(新潟本社 業務課主任)
   米山 潔(西川支所  主任)
   小柳裕樹(新潟本社 総務課主任)
   野上隆弘(六日町支所 技師)

新潟県下水道公社の生い立ち

(1)
設立の経緯
a新潟県下水道公社(以下「公社」といいます。)は、下水道管理者である新潟県の流域下水道の維持管理業務等の受託、その他県又は市町村が実施する下水道事業に協力し、こうした事業により県民の生活環境の向上と水質の保全に寄与することを目的に、県と流域関連市町村がそれぞれ50%を出捐し、昭和56年に設立された法人です。
b設立当初は、県職員の出向で業務を運営してきましたが、下水道部門に特化した優秀な技術者を確保するために、平成11年度から職員は完全にプロパー化されました。(後記3(4)ア参照)
(2)
公社の主な事業内容
a公社の主たる事業は次のとおりです。
①流域下水道及び公共下水道の運転管理等の受託
②下水道排水設備工事責任技術者の認定・登録等の事業 
③下水道に係る水質分析業務等の受託
 
b上記の他に主たる事業に付随して次のような事業を行っています。
①地方公共団体の実施する下水道事業に対する協力
②下水道技術の調査・研究
③県民に対する下水道知識の普及・啓発 など

公社の設立のミッション(=使命)

下水道は、快適で住みよい環境づくりと公共用水域の水質保全のために不可欠な基幹的公共施設であり、その効用を的確に発揮させるために適切な維持管理を行う必要があります。
公社は、上記のとおり、流域下水道の維持管理業務等を受託することを目的に設立された法人であることから、そのミッションは次のように集約されます。

①適正な水質管理
②汚泥の円滑・適正な処理
③維持管理業務の効率的執行
これらを達成する上で必要な
④専門技術者の育成・確保

ミッションの達成状況検証

公社が設立目的とされた業務を遂行しているかということと、上記で4点に絞ったミッションを達成しているかは同義ですから、これを検証します。

(1)
ミッションその1…適正な水質管理
a水質汚濁防止法の法定基準は100%達成
下水道の果たす大きな役割の一つは、公共用水域の水質保全です。
下水処理場で処理された水を川に放流するためには、水質汚濁防止法で定められた水質基準をクリアーする必要がありますが、県内8処理場における、直近6年間の放流水の検査(県又は新潟市環境部局実施)の結果は、表-1のとおり100%達成しています。
公社は、下水道の処理を開始して以来28年間、維持管理業務を担う中で培ってきた技術と経験及び管理ノウハウを活かして放流水質を良好に維持し、公共用水域の保全に努めてきました。
 
表-1 放流水の検査結果(8処理場の合計)

年度 H16 H17 H18 H19 H20 H21
検査回数 (延べ数) 8 12 12 13 12 13
基準遵守回数 (延べ数) 8 12 12 13 12 13
法令水質基準遵守率(%) 100 100 100 100 100 100

 
b下水道法の法定基準を大幅にクリアー
法定基準は、放流水がクリアーすべき最低基準を定めていますが、公社が処理をしている8流域下水道の処理場では、表-2のとおり、個々の項目全てについ て法定基準を大幅にクリアーしています。
 
表-2 H21年度 検査項目毎の基準値及び8処理場の平均水質状況
(注)1「平均値」は、公社による自主検査回数(年間概ね250回(BOD及び大腸菌群数は概ね50回)の単純平均である。
   2「検査項目」は次のとおり。
    ①pH:水素イオン濃度、② BOD:生物化学的酸素要求量
     (水の汚濁指標の一つ。数値が大きいほど水が汚れていることを表す。)
    ②の基準値の幅は、各処理場毎に基準値が異なるため。
    ③COD:化学的酸素要求量、SS:浮遊物質
 
このように、放流水質を基準値に対し大幅に良好な状況で維持できるのは、公社が、流域下水道の維持管理業務を担うために設立され、専ら県民の快適な生活と公共用水域の良好な保全が第一という観点から業務を遂行しているから成し得ることと言えます。

(2)
ミッションその2…汚泥の円滑・適正な処理
下水処理場からは、産業廃棄物としての汚泥が毎日大量に発生しますが、公社は汚泥処分についても、安定的な処分、有効利用の方法、処分費用等について専門的見地から、処分先や配分を検討した「汚泥処分計画」を作成し、有効利用と経費削減を両立させています。
a直近5年間の処理状況
汚泥処分量が毎年増加する中、「建設資材」や「コンポスト」などへの有効利用率を高め、可能な限り資源の再利用に取り組んでいます。(表-3参照)
 
表-3 汚泥の処理・処分(有効利用)状況
(注)1建設資材:汚泥中の無機分及び燃料分を、セメント工場でセメント原料として利用
   2コンポスト:汚泥中の窒素、リン分などの有機分を肥料として利用
   3埋 戻 材 :溶融炉で溶融しガラス化したものを、道路工事の埋戻材として利用
   4平成21年度は中越流泥センター設置稼働により、脱水ケーキでの処分が大幅減少し、乾燥汚泥での処分が大幅に増加している。
 
b高まる有効利用・資源の再利用化
汚泥処分量を、平成21年度と平成17年度の状況において比較すると、全体の処分量については、若干(200t)減少したにも拘わらず、有効利用量は2,000tも増加しており、この間の有効利用率は11ポイント増加しました。一方、「焼却処分」及び「埋立処分」の非有効利用は、同期間において2,200t(63%)も減少しており、資源の有効利用に対する取組が大きな成果を挙げています。
(3)
ミッションその3…維持管理業務の効率的執行
下水道使用料は受益者負担が原則ですから、使用者である住民の負担となっているため、その負担ができる限り少なくなるよう、維持管理の効率的な運営が常に要請されます。
 
a公社では、設立以来、こうした観点からの適切な維持管理に努めるとともに、常にコスト意識を持って維持管理に取り組んできましたが、更なるコスト縮減に向けて積極的に取り組む必要があるとの考えから、平成10年度に「効率的な運転維持管理についての検討会」を設置し、下水道施設の効率的な運転維持管理の具体的方法として、①点検委託業務、②省電力化及び電力契約、③水質消耗品の契約及び注入率の各般の見直しについて検討を行いました。(表-4)
 
表-4 経費節減に関する検討会
b平成10年度以降も引き続き、各処理場ごとの処理水量や機器の異同による施設の状況等の差異等に基づき、施設ごとの最適な維持管理を追求(下記参照)し、効率的な改善策の実施により、経費節減に努めました。
その結果、平成15年度以降、8処理場の合計処理水量が平成21年度時点で1.3倍に増加しましたが、維持管理費は1.09倍に止まっています。(図-2参照)
 
①平成13年度から:
電力の処理場別実践対策に基づく検討により、電力使用量の大きい機器の運転時間の夜間へのシフト、或いは、運転時間の削減又は平準化など、運転操作の工夫と運転方法の改善などに取り組みました。
その結果、平成21年度における処理水量が、平成15年度比1.30倍と伸びたにも拘わらず、使用電力量は平成15年度比1.19倍に止まり、この取組の効果が現れました。(図1及び2参照)
 
図-1 処理水量と使用電力量の推移 (平成15年度を1とした場合)
② 平成14年度:
運転管理委託費の契約方法等について検討を行い(後記表-5(注)3参照)、平成15年度から運転管理委託業務の複数年契約を採用した結果、「諸経費率」の圧縮により、平成21年度の設計額ベースで約1千万円の節減に繋がりました。
前述のとおり、平成21年度における処理水量の伸び率が平成15年度比1.30倍となったにも拘わらず、種々の削減努力の結果、平成21年度における維持管理費(28.1億円)の伸び率を平成15年度比1.09倍に抑えることができました。
 
図-2 処理水量と維持管理費の推移 (平成15年度を1とした場合)
(4)
ミッションその4…専門技術者の配置とその育成
a専門技術者の必置
前記(1)のように、法定の基準を上回る水質を確保し、下水道施設の維持管理を円滑に行うためには、多岐に亘る専門技術・知識が必要であるため、公社では、各処理区に化学・電気・機械の専門技術者を最低1名ずつ(新潟及び長岡処理区については部門により複数の専門職)を配置し、適正な維持管理業務を行っています。(表-5参照)
 
表-5 公社職員の配置状況(H24・4・1現在)

(注)1新潟本社・業務課は、他支所を統括する「本社機能」と新潟処理場の維持管理を行う「浄化センター機能」を併せ持つため、「化学」及び「機械」職を複数配置
   2長岡支所は、以下の理由により「化学」及び「機械」職を複数配置
    ①化学:中越3処理場の水質試験を集中処理するため
    ②機械:処理場(1名)に加え、近隣市町及び自処理場の汚泥を処理する「中越流泥処理センター」(1名)が併設されているため
     3各処理場には、公社との委託契約により、公社職員の指示・指導により設備の運転・監視等を行うメンテ業者職員が交代勤務により、公社業務の補助を(主な業務の概要は次のとおり。)行っている。
     (上記参照。新潟、長岡は、汚泥乾燥設備設置のため、他支所より多い。)

①化学系業務:水質・汚泥の分析補助

当該分析結果に基づき、公社職員が毎日、適正な水処理を行うための微生物管理となるよう、処理場全体の運転管理を判断しています。

②機械・電気系業務:設備の監視・点検・小修繕
 
b職員配置状況の他県比較
図-3を参照すると、全国の類似規模の処理場における配置数と比較しても極めて少ないことが窺われます。また、公社の個別の処理場と規模が類似する処理場を有する某県と比較すると、その違いはより明瞭です。(表-6参照)
これによって、各処理場における専門技術者の配置を「各職種原則1名」という最低限に抑え、少人数の優秀な技術者によって効率的に行っていることが判ります。
 
図-3 処理水量別技術者の配置比較
(注)1新潟は本社機能を有するため、処理場維持管理見合の人員に修正した。
   2各県下水道公社の年報から、一の処理場における配置技術者数が明示されているものを抽出し、作成した。
 
表-6 某県類似処理場における配置職員数との比較
(注) 1 規模の類似性は、専ら流入水量によった。
   2 「長岡処理場」には、表-5 (注)2の理由により、「化学」及び「機械」職が複数配    置されているもの。
   3 「職員数」は正規職員の数。但し、某県の職員数には、県からの派遣職員を(新潟県    では存しない。)含む。
 
c職員の職業意識
下水道の処理場は、多種多様な巨大装置、機器を擁し、一年365日、毎日休み無く稼働する必要があるとともに、前述のように、処理場で処理した水を河川に放流するためには、法定の基準をクリアーする必要があります。
これらの機械・機器類を効率的に運転管理することは、コスト削減にとって不可欠なことであり、これによって、利用者である県民の負担軽減にも繋がります。
このため、これらの機械・機器類を最新の知識と技術により効率的に運転・操作できるよう、公社職員は、常に高度な資格取得を目指し、”コスト削減” マインドを以て業務に当たっています。
 
d専門資格の取得・保有状況
公社では、専門資格は下水道の処理に当たり必要、かつ、有益との観点から、職員が資格を取得する場合に一定の補助を行い、これを推進しています。
専門資格は多岐に亘っていますが、「下水道処理に密接な関連を有し」、かつ、「取得に一定の困難を伴う」資格についての保有状況を整理してみたのが下表(表-7)です。
 
表-7 保有する資格と保有者数 (注)
1保有者は延べ人数であり、同一の職員が、複数の資格を保有している場合もある。
2資格は、業務に密接に関連、かつ、取得が一定程度困難なものに限定した。
3保有者数は、各年度末(H22は12月末)の数である。
 
公社の技術系職員は31人ですから、職員は何らかの資格を保有しており、 また、毎年、多くの職員が、新たな資格の取得にチャレンジしています。  
 
e研修・研究会の実施状況
過去において迷惑施設視されていた下水道終末処理場が、近年、隠れた貴重な資源を産み出す再生工場、いわゆる”都市鉱山”と目され、資源の再利用や燃料化がクローズアップされています。
公社では、こうした観点から、各種の検討会や調査研究に取り組むとともに、経費節減に係る検討を持続的に行い、効率的な管理を目指しています。
 
表-8 資源有効利用に関する調査研究及び検討会等

ミッションの他に…県との連携関係

公社は、独立した団体として流域下水道の8処理区について維持管理業務を行っており、業務の大宗は、県との委託契約に基づいています。業務の実施方法は、各処理場からの放流水を適正に保ち、各処理場から発生する汚泥を適正に搬出しなければならないとのみ定められています。
契約に定められた業務の実施に当たっては、その範囲をこれらに限定することなく、周辺業務についても積極的に遂行し、行政の補完的役割を担うよう務めていますが、こうしたことは前述のミッションを達成する上で、密接不可分のことと考えています。
 

(1)
業務内容
具体的な業務内容は以下のようになっています。
 
a施設管理
①処理場、ポンプ場及び中越流泥センター等の各施設及び物品の更新・管理
②定期的な分解整備、部品・消耗品等の取り替え及びその他修繕並びにこれらの設備の警備及び清掃 等
 
b運転管理
①中央操作室、水処理施設、汚泥処理施設及びポンプ場の運転管理
②処理場、ポンプ場及び幹線管渠における水量の測定
③流入水、放流水等の業務に必要な水質分析
④汚泥及び発生ガスの分析等及び各号に付随する業務
 
c電気工作物の保安
①電気工作物の保安規程の制定
②電気主任技術者の選任
③電気工作物の保安及び各号に付随する業務
(2)
周辺業務の例示
本来業務の周辺業務を例示すると次のようなものがありますが、本来の業務を遂行する上で、いずれも重要な意義を有するものです。
 
a以下の報告内容の当否に対する確認
①流域下水道管渠への公共下水道管渠接続箇所における市町村の水質調査報告
②特定事業場が設置する汚染除去設備に対する市町村の審査結果報告及び当該事業場に対する市町村の定期検査結果報告

 
b施設・設備の更新に対する助言
①流域下水道処理場は、多種・多様な機器・設備からなる装置 産業と言って も過言ではありませんが、一定年数の経過によって更新する必要があります。
しかし、各処理場における機器・設備等は、処理場の規模や設置場所における自然環境と地形の違い、流入水量の多寡等による水質の異同及び設置年次等によって異なっていること、また、機器・設備の技術革新が著しいこと等から、更新時における最適な機器・設備の決定は、日常の維持管理を行っていなければ、かなり難しい問題です。そのため、公社が主体となって、この更新計画を策定しています。
② 公社は、日常の維持管理業務から得た経験と知見を基に、かつ、各処理場の個別状況の特性を勘案し、あくまでも「効率的な運転管理に最適な機器等は何か」という観点に立ち、更新の選定基準の策定段階から詳細設計及び設置完了まで、県に助言を行っています。
 
c 危機管理体制の整備
下水道は、水道やガス、電気と同様、たとえ災害が発生しても、一瞬たりとも停止することの許されない、県民の暮らしにとっては不可欠な生活インフラであることから、災害が発生した場合に備え機敏に対応出来る体制を構築するとともに、マニュアルを整備しています。
こうしたことは、維持管理を本務とする公社にとって当然の責務であり、県との連携・協調の基に、訓練を実施するとともに、より良い体制整備のためにその結果を反映させるなど、毎年マニュアルの見直しを行っています。
①緊急連絡体制構築
毎年4月1日付けで、各処理区毎に、県、市町村、公社、メンテ会社及び消防署等との連絡網を作成しています。
②運転管理マニュアルの整備・更新
処理場、ポンプ場及び管渠等における運転管理をマニュアル化し、平時及び緊急時における迅速な対応を図ることとしています。
③地震対策マニュアル整備・更新
地震発生時及び被災後の対応手順を整備するとともに、中越地震の教訓から、地震対策マニュアルについて、地震発生後の初動対応をより詳説した「地震対策マニュアル(抜粋板)」を作成しました。
 
d災害時における連携・協力
災害発生時においても、通常の維持管理が継続して行えるよう緊急連絡体制を構築するとともに、対応マニュアルを整備することは委託業務の一環と考えられます。
しかし、被災した施設・設備等の修復は、経年による更新と同様、管理者である県の本来業務ですが、県民生活への影響の最小化という観点から、迅速な復旧のため、最大限の協力を行ってきました。(下記参照)
①中越地震対応・中越沖地震対応
堀之内処理場が大きな被害を受けた他、他の処理場でも被災しましたが、通     常の維持管理業務を行う中で、県の災害復旧業務に一体となって協力しました。
② 新潟市大停電時対応 
停電時間は長時間に及びましたが、既存の運転管理マニュアルに則り、支障     なく対応しました。
e市町村協力と市民に対する啓発活動
①市町村に対する協力
 
(ア)接続点における水質調査への助言、
(イ)特定事業場に対する指導同行等

② 市民への啓発
 
(ア)処理場見学対応
公社は、下水道についての理解を深めてもらうため、一般県民を対象とする 処理場見学を積極的に受入れるとともに(表-9参照)、下水道への接続率向上のため、下水道PRのイベントを行う市町村に対する協力も行っています。
 
表-9 過去5年間の流域8処理場への見学者の状況
 

(イ)下水道の使用法のPR
下水道には、多くの事業所が接続し、営業で使用した水を排出しています。特に、使用後の油(低温で固まり易いラード等の動植物油)を大量に排出する事業所では、油分の収集器(”グリーストラップ”)を設置し、除去していますが、その管理が不十分である場合、油の大量排出に繋がり、下水管や処理場内の配管を閉塞させ(写真参照)、特に、処理場にとっては、 維持管理上の大きな影響を及ぼすこととなります。
このため、あらゆる機会を捉え、事業所等に対するグリーストラップの設置と管理の徹底を要請し、油分の排出抑制を呼び掛けています。
 
写真 店舗設置の”グリーストラップ”油分で閉塞した処理場配管

検証の結果と今後の課題

業務内容

公社のミッションは、四点のいずれについても十分達成している。

しかし、社会、経済情勢の変化、とりわけ下水道を所管する県や市町村財政は逼迫の度合いを増すとともに、利用料に直結する維持管理費に対する住民の視線も厳しさ を増し、個々のミッションの質に対する要請は年々高まってきています。
この要請を実現するための公社の課題は、次のとおりと考えられます。

今後とも、職場での実地研鑽やより高度な資格取得によって技術力の向上に努めるとともに、新たな発想と視点から改善策を見出す経営感覚を身に付け、これを実践に繋げる地道な努力を、職員一丸となって取り組むことが必要である。

なお、今後の課題については、その対応策とともに次章に詳述します。

公社を巡る社会情勢

(1)
公社のミッションは、①適正な水質管理、②汚泥の円滑な処理処分、③維持管理業務の効率化、④各種専門技術者の確保 であることは先に述べたとおりですが、今後とも、公社の必要性が、県及び関係市町村、ひいては県民の皆さまから認知されるためには、このミッションを今後も高いレベルで達成し続ける必要があることは勿論です。
(2)
一方、地方公共団体を巡る財政状況が一層厳しさを増すにつれ、全国の地方公共団体では経費節減を図るため、①出資法人の在り方、②出資法人への職員派遣の見直し、③出資法人に対する業務発注の在り方(随意契約の当否を含む。)等々、種々の見直し…具体的には、統廃合、業務の見直し、人員の削減(県職員等の引き上げを含む。)、及び指定管理者制の導入など…が実施されています。
(3)
新潟県でも委員会を設置し、こうした観点からの検討を毎年行い、見直し意見が出されており、公社としてもこれを実行し、現在に至っています。
ところで、等しく下水道公社という名を冠しているものの、全国の下水道公社の業務は、設立の経緯や県及び市町村との協力・連携関係に違いがあり、区々であるのが実態であるため、当県の実情にあった”公社の在り方”を模索すべきものと考えます。
(4)
しかし、財政状況の厳しさとともに、地方公共団体とその出資団体との関係については、厳しさを増しており、従来どおりただ漫然と業務を行っていては、県及び関係市町村、並びに県民の皆さまからその存在の必要性を広く認知して頂くことはできないと、公社自身が自戒する必要があります。
(5)
こうした状況認識の下、職員自らが、今後の公社はどう在るべきかを探り、全員が共通認識として持ち、業務の遂行に当たる必要があります。
その視点として、具体的には県民のみなさまとの関係、市町村との関係、県との関係を見直し、強化を図ることと、現在公社が取り組んでいる喫緊の課題の解決を図る必要があるものと考えます。

県民、関係市町村及び県を巡る課題と対策

公社のミッションは、上記1(1)に集約したとおりですが、達成による効果は、  県民のみなさまに還元されるべきものです。
 

(1)
県民のみなさまとの関係
 
ア 課題
毎日の生活において下水道を使用している県民のうち、これを処理する流域下水道の維持管理業務を、公社が行っているものと認識している方は殆どいないのが現状と思われます。
これは、これまで下水処理場の見学に来場する県民以外に、接点が殆どないなど、公社が県民のみなさまに対して、その存在と役割を積極的にPRしてこなかったことに起因しており、今後は県民から公社を認知して頂く必要があります。
 

イ 方策

・下水道公社に対する県民認知度の向上
・維持管理費の低減

 

県民の皆さんから、公社の存在を知って頂くことは勿論のこと、公社が果たしている役割とその重要性についても認識を深めて頂く必要があります。
そのためには、何よりも県民の皆さまに向けた下水道に関する啓発活動と公社業務に関する情報発信及び維持管理費の低減に努めます。
 

(ア)公社ホームページの更新
公社の存在と役割について県民の認識と理解を得るため、公社が担っている役割の重要性や具体的な業務内容を分かりやすく掲載するなど、ホームページを更新します。

 

(イ)パンフレットの改編
現在、小・中学生及び一般県民の皆さんが、県下8処理場に見学に来場していますが、その際、処理場の機能と役割について説明するため、パンフレットを配布しています。
これを、公社の存在と役割についての認識と理解が一層深まる内容に改訂します。
 
(ウ)技術力の一層の向上により維持管理の効率化を実現し、管理費用の低減を通じ利用者の向上に寄与します。

(2)
市町村との関係
 
ア 課題
現在公社は、県民のみなさまと直接接点を持っていないため、市町村が介在することとなりますが、その信頼と認知を得ることも極めて重要なことです。
市町村との間には、下水道排水設備工事責任者登録制度(下記注参照)や下水道に関する職員の技術研修会などの業務関係の他は、流域下水道関係市町村との間において維持管理業務の一環としての特定事業場の設置届や流域下水道接続点の水質調査等、限られた協力関係しか存在しません。
公社の存在が市町村から一層認知されるためには、市町村からの信頼が高まるよう、協力関係の強化を図ることが必要です。
 
イ 方策
市町村との関係強化を図るため、積極的な情報発信を行うとともに、管理の受託を目指します。

・下水道施設の維持管理に関する情報発信
・し尿等受け入れ処理についての情報発信
・公共下水道における下水道維持管理業務の受託

 
(ア)下水道施設の維持管理に関する情報発信
県内8処理場における維持管理に関する豊富なノウハウを積極的に公開し、市町村が下水道を維持管理する上で直面する課題解決を支援します。
 

(イ)し尿受け入れに処理に関する情報発信
市町村が管理するし尿処理施設の中で、老朽化応策の一つとして、流域下水道の処理施設において共同処理を要望するものが複数件あり、現在、具体的な検討を行っています。
今後、他の市町村でも発生することが予想されることから、既に共同処理を行っている新津処理場や国府川処理場の実績等とともに、現在検討中の案件についても情報発信し、こうした市町村が検討する上での参考に供します。
 
(ウ)公共下水道における下水道維持管理業務受託
佐渡市の統合により、国府川流域下水道は流域下水道としての使命を終え、平成26年度から同市に移管の予定です。
公社は、県下の他の流域下水道の維持管理のみならず、国府川流域下水道の維持管理により培った豊富な経験と知見を有しており、佐渡市管理の公共下水道を加えた全下水道の維持管理について、現状の維持管理経費の削減につながる効率的な運転管理の具体的な提案を行い、同市からの受託が実現するよう努めます。

(3)
県との関係
公社はこれまで、流域下水道の効率的な維持管理を行うことができる財団法人として、県からその業務を受託してきましたが、平成24年4月1日から、いわゆる「公益認定法」に基づき公益目的事業を行う公益財団法人となりました。
新たに出発した公社にとって、長年の業務の実績により培われた経験と知見を基に、これまで以上の適切な維持管理を実現することが業務を継続する上での課題です。
このため、次の諸点の実践により、一層の総合力を高めます。

・職員の資質の向上・・・専門分野を横断する多分野の専門資格取得
・一層のコスト削減に向けた研究の実施・・・一層の効率的運営の達成
・省エネ、資源リサイクルに向けた研究の実施
・危機管理体制の充実・確立
(4)
業務を実施する上で直面する喫緊の課題
上記の課題の他に、下記のとおり、現在、業務を実施する中で早急に打開すべき喫緊の課題があり、その解決を図ります。 
 
ア 汚泥処分計画の策定
公社では、処分費の軽減と安定的な処分という観点から、毎年度「汚泥処分計画」を策定し各処理場に最適となる処分先と処分方法を決定し、増加する維持管理費を最小となるよう努めています。
 

イ 汚泥の有償処分先の発掘
汚泥は、セメントや肥料として有効利用されているにも拘わらず、当該資源への転用に対しても処分費を要するため、流入水量の増加に伴う汚泥処分費の増加が、維持管理費の大きな負担となっています。

【汚泥処分・運搬費用の年間支出(平成23年度)】
新潟処理区:6千万円、新津処理区:1億円など
8処理区総額:約5億円

上記計画の策定による維持管理費の抑制に止まらず、セメントや肥料は有価物ですから、汚泥を正当に評価し、有償で引き取る企業等が潜在していると考えられるので、公社が業務を通じて収集した情報を基に、こうした企業を発掘するよう努めています。
これにより汚泥処分費の大幅な削減を実現すれば、県財政への寄与は勿論、資源の再利用によるエコ社会の実現にも寄与することに繋がります。
 
ウ 設備の改築更新計画への提案
前述(Ⅰ4(2)イ)のとおり、設置後一定年数を経過した施設・設備については、改築・更新が必要となり、その計画の立案は県にとっても大きな課題となっています。
一方、下水処理場には、汚泥、消火ガス等以外にも利用可能なエネルギー源やリンなどの回収可能な資源が潜在しており、改築・更新に当たっては、単に効率的な運転という視点のみならず、エネルギーや資源の有効活用に繋がる観点からも検討する必要があります。
公社では、改築更新計画の立案に際して必要となる、個々の処理場における施設や設備及び機械に関する詳細情報や知見を保持しており、こうした観点から積極的に提言していきます。

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